2025年02月19日
第3回に引き続き「高齢者虐待防止措置未実施減算」について、取り上げていきます
◆高齢者虐待防止のための指針の整備
今回の介護報酬改定で義務化された「定期的な委員会の開催」の役割の一つには、
虐待防止のための指針の整備を行うこともあげられています。
委員会のメンバーは、決定権限者である事業所の長たる役職(理事長・施設長・
介護部長・管理者など)を含む多職種で構成されますので、各人の専門性から
多面的に意見交換を行いながら、指針を整備することが望ましいと思われます。
指針のひな型は、インターネット上に散見されますので、各々で検索のうえ、
いずれかの様式をたたき台とするのもよろしいのではないでしょうか。
多職種がそれぞれの役割を効果的に発揮することで虐待の防止、再発防止に働きかけられる
のではないかと思いますが、指針にもメンバー構成とその役割を明記することで、本人だけではなく、
事業所の全職員にとっても「誰がどのような役割を担っているんだなぁ」という具体的な行動指針にも
なり得るのではないでしょうか。
◆指針の策定
●指針に掲載する内容は、高齢者虐待防止法による虐待防止の観点から十分に検討しつつ、
適切な内容を盛り込む必要があるため、おおむね下記の項目について、各事業所の状況を
踏まえながら明記するようにしましょう。
イ 事業所における虐待の防止に関する基本的考え方
ロ 虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関する事項
ハ 虐待の防止のための職員研修に関する基本方針
ニ 虐待等が発生した場合の対応方法に関する基本方針
ホ 虐待等が発生した場合の相談・報告体制に関する事項
ヘ 成年後見制度の利用支援に関する事項
ト 虐待等に係る苦情解決方法に関する事項
チ 利用者等に対する当該指針の閲覧に関する事項
リ その他虐待の防止の推進のために必要な事項
※出典:指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について(平成11年9月17日老企第25号
指針の策定で注が必要なのは、ひな型に沿って指針の本文が写し書きされてしまい、皆さまの事業所の
実情とかけ離れたお飾り的な指針になってしまうことです。高齢者虐待防止とは、いち早く虐待リスクに
気づき、初動に移すことが大切です。
もし仮にスタッフの一人が、虐待の加害者となってしまった際には、第一発見者は動揺するなかでの
初動に当たることになるはずです。そのような状況下で複雑な指針をいちいち精読できるでしょうか?
高齢者虐待防止指針とは、介護現場のスタッフにとって分かりやすい、見やすい、理解しやすい、
活用しやすい、そのような行動指針やフローチャートなるものを目指すべきではないかと思います。
さらに指針の策定で注意すべきことがもう一つあります。それはトップダウン型ではない
ボトムアップ型の指針であれ、ということです。とかくこのような様式は、トップや上司が
手早く作成し、スタッフに順守せよといわんばかりに掲げられることが多いものです。
ではなぜ守られないのか・・・自分が関わっていないお飾りになっているからです。
ぜひ今回の指針の策定においては、多忙中ではあるかと思いますが、一人でも多くのスタッフから
ひと言意見を貰い、そのうえで指針を整備して頂きたいと思います。
すでに指針が整備されている事業所では、次回(毎年)の指針のブラッシュアップの際には、
「皆さんからも意見を聞くからね~」と触れ回り、職員の意見を集約した指針にブラッシュアップ
していただきたいと思います。
【次回テーマ】第5回:R6介護報酬改定:高齢者虐待防止措置未実施減算~研修の定期的な実施
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このブログは、高齢者虐待防止研究を専門分野とする筆者:梅沢佳裕が、
これまで発出されてきた論文、専門誌、Web、その他さまざまな知見や
情報をもとに、ブログ「介護施設における高齢者虐待防止と権利擁護」
として配信しているものです。
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