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2025年04月11日

なぜ介護現場でアンガーマネジメントが注目されるのか

皆さん、こんにちは。ベラガイア17 人材開発総合研究所の梅沢佳裕です。

いよいよ2025年度がスタートしました。介護現場では、事業計画に沿って各種委員会活動も始動し始めていることと思います。

さて、4月は何かと忙しい月でもあります。そんな折に、ついイライラしてしまうということもあるのでは…。

そこで今回は、イライラ感情と上手に向き合うためのアンガーマネジメントについて触れてみたいと思います。



1.アンガーマネジメントとは?
アンガーマネジメントは、苛立ちやイライラ感情(アンガー)と上手に向き合い、自らコントロールする認知行動療法(CBT)をベースにした心理療法の一種です。

もともとは犯罪者矯正プログラムなどに用いられていましたが、現在では一般企業の研修や教育、医療・介護分野、カウンセリングなど、多くの場で活用されています。

アンガーマネジメントの目的は、「怒らないこと」ではなく、「怒る必要のあることは上手に怒る」、「怒る必要のないことは怒らなくて済むようになる」ことです。

つまり、苛立ちやイライラ感情に振り回されず、適切に対処するためのスキルを身につけることが目標なのです。


2.介護現場でアンガーマネジメントが注目される理由
近年、介護業界ではアンガーマネジメントが注目を集めています。その背景には、介護現場特有のストレス要因があります。

介護職員は、人手不足や激務が常態化している状況に置かれ、利用者さんとのコミュニケーションの問題(話を聞いてくれない、理不尽な文句を言われるなど)、利用者からのいわゆるセクハラ行為、労働条件や職場の人間関係などから、多くの介護職がストレスを抱え込みやすい状況にあります。

このようなストレスを「専門職だから我慢すべき」と上司から告げられ我慢や放置が続くと、職場の雰囲気を悪くするだけではなく、利用者対応にも悪影響を及ぼすことにもつながりかねません。

介護業務中にイライラしてしまうのは、ストレスが限界に近いという警告でもあります。そのため、アンガーマネジメントを学び、イライラ感情をコントロールするスキルを身につけることが求められているのです。

また、価値観が多様化する現代社会において、自分とは違う価値観を認められないことによる怒りがトラブルに発展することも増えており、介護現場においても例外ではありません。


3.介護にアンガーマネジメントを取り入れるメリット
厚労省は、「高齢者施設等における高齢者虐待防止措置及び身体的拘束等の適正化
のための措置の徹底並びに周知に関する取組の実施について(要請)」(令和6年12月)の通知の中で、次のように周知を促しています。

「高齢者虐待防止措置として開催することとされている研修のカリキュラムの内容に、高齢者虐待防止の基礎的な事項に加え、ストレスマネジメントやアンガーマネジメントについての内容を含めること」(3ページ目の中段)

これにより、アンガーマネジメント研修も号令者虐待防止措置として義務づけられている研修なのです(法定研修)。
厚労省は、「高齢者施設等における高齢者虐待防止措置及び身体的拘束等の適正化のための措置の徹底並びに周知に関する取組の実施について(要請)



介護の現場にアンガーマネジメントを取り入れることのメリット
  • アンガーマネジメントを実践できるようになると、苛立ちやイライラ感情に振り回されることが少なくなり、ストレスの軽減につながります。
  • 苛立ちやイライラ感情に支配されず、適切な言葉で自分の意思を伝えられるようになり、苛立ちやイライラの原因を相手にも納得しやすい表現で伝えられるようになります。
  • 苛立ちやイライラの原因を整理することで、適切に対処する道筋を見つけやすくなります。苛立ちやイライラの原因を冷静に整理できるため、感情にとらわれない適切な対処ができるようになります。
  • 苛立ちやイライラ感情は、モチベーションの低下を引き起こす恐れがあります。アンガーマネジメントによって、コミュニケーションのねじれ(誤解など)を解消すれば、モチベーションの維持・向上にもつながるでしょう。
  • 怒りを適切に対処できるようになれば、良好な人間関係の構築が期待でき、利用者や家族、同僚とのコミュニケーションが円滑になります。

4.感情労働としての介護
介護は、肉体労働でなく「感情労働」の側面が強い職業だと言われています。感情労働とは、自分の感情を抑えたり作り出したりしながら対人援助を行う職業のことです。

介護現場では特に、以下のような理由から苛立ちやイライラ感情が生まれやすい環境にあります。

例えば…
•認知症により意思疎通を図ることが困難な方への対応
⇒利用者が認知症などにより、攻撃的な態度をされたりすることがあります。これに対して焦りや不安・苛立ちといった感情が生じることは人間に備わっている喜怒哀楽という自然な感情の一つです。

•繰り返される業務と結果が見えにくい労働 ⇒介護は同じケアを何度も繰り返し行う必要がある上に、短期的には目に見えて改善が感じにくい仕事です。このような状況は達成感を得にくく、精神的な消耗につながりやすいとの指摘もあります。

•人手不足による過重業務
⇒慢性的な人手不足により、一人あたりの業務量が増加し、休憩時間も確保しづらい状況があります。仕事のストレスが大きいと感じる介護職は約 7割に上り、身体的・精神的な疲労が感情をコントロールする余裕を奪ってしまい、閉塞感を生み出しています。

•家族からの要求やクレーム対応
⇒利用者の家族からの要求やクレームに対応する際、「ちゃんと頑張っているのに、これ以上何をすれば良いの?」という無力感から怒りが生じることがあります。

•専門職だからこそ、イライラしてしまう自身の対応に自責の念を抱いてしまう
「自分は介護のプロなのに、感情的になってしまって情けない…」と自分を責める介護職の方も多いかもしれません。しかし、感情労働としての介護の特性を理解すれば、感情的になること自体は自然なことであり、問題なのはその感情との付き合い方だということが分かります。介護現場で感情的になることは、プロ意識の欠如ではなく、むしろ人間として自然な反応であることも認識することが、アンガーマネジメントの第一歩です。

大事なのは、苛立ちやイライラ感情に振り回され、感情任せにした対応をしないということです。だからこそアンガーマネジメントは介護現場には必須の重要研修なのです。


●研修講師・コンサルティングのお問い合わせは、ホームページからご連絡をお願い致します。
ベラガイア17 人材開発総合研究所(ホームページ)

●アンガーマネジメント研修のご案内

『介護現場のストレスケアとアンガーマネジメント~イライラ感情をコントロールするための取組みPoint解説!』
*日 時:2025年5月22日(木)19:00~20:30 (Zoomオンライン)
*講 師:梅沢佳裕(ベラガイア17 人材開発総合研究所)
*参加費:5,000円でサインインPC1台につき全スタッフの参加もOK!
*申込方法:詳しくはメデュケーションでご確認を!
     (非会員の方も申込みできます)

メデュケーション(介護情報サイト)

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