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2025年05月11日

【第3回】介護職がカスハラを受けたら?初動対応・記録・相談のベストなタイミングとは?

皆さま、こんにちは。
ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表の梅沢佳裕です。


1.はじめに|「我慢しない」が新しい常識
介護現場でのカスタマーハラスメント(カスハラ)は、怒鳴る、暴言、過剰な要求など、日常の業務を妨げ、職員の心を追い詰める深刻な問題です。

一般企業ではすでに多くの事業所等がカスハラ対策に乗り出していますが、介護サービス事業所では、利用者や家族にカスハラと割り切って対応して本当に良いのだろうか?っとの心配も…。

いざ自分がカスハラを受けたとき、こう思っていませんか?
  • 「本当に言い返していいの?」
  • 「どこまで記録すればいい?」
  • 「報告しても“クレーム対応力がない”と思われそう…」
本記事では、カスハラの“初期対応”に焦点を当て、「現場での適切なふるまい」「記録の残し方」「相談のタイミング」まで、実践的に解説します。
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2.カスハラ事例―――
“また来るな”と言われた若手ヘルパーのケース

-登場人物-
●ヘルパー:松本さん(20代・訪問介護職・勤続1年未満)
●利用者:Dさん(80代男性・独居)
●サービス提供責任者:鈴木主任
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ある木曜日の午後、松本さんはDさん宅を訪問。いつものように掃除と調理を行う予定だった。
松本さん:「こんにちは、松本です。今日はキッチンとお部屋の掃除をさせていただきますね」

Dさん:「またお前かよ。前回、床が全然拭けてなかったって言っただろうが。ほんと使えねぇな!」

松本さん:「申し訳ありません。前回は時間内にすべて行き届かなかったかもしれません。今日は丁寧に…」

Dさん:「丁寧にだと?口だけかよ。もう来なくていい。責任者呼べ!」

動揺しながらも業務を終えた松本さんは、すぐに事業所に戻り、鈴木主任に報告。
鈴木主任は状況を聞き取り、Dさんへの対応と記録作成を開始しました。

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3.カスハラ発生時の「現場対応」の基本
① 感情的に反応しない
相手が怒っていても、こちらが同じように怒ってしまっては、状況はさらに悪化します。
  • NG例:「そんな言い方しないでください!」→火に油を注ぎます
  • OK例:「ご不満があったのですね。ご意見は事業所に報告いたします」
一歩引いて、“組織の一員として対応する”ことがポイントです。

② その場で約束・判断をしない
カスハラを受けた際、相手に謝罪しすぎたり、要望に応じる約束をしてしまうと、後々問題が大きくなります。
  • 「今後は〇〇します」
  • 「担当をすぐに変えます」
こうした約束はすべてNGです。代わりに、
「こちらの対応については事業所にて確認し、折り返しご連絡いたします」
と伝え、いったん持ち帰るのが正解です。

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4.記録に残すべきポイントとは?
「ハラスメントは、その証拠がないと組織が動けない」ことが多々あります。
口頭だけの報告ではなく、以下のポイントを押さえて“できるだけ具体的に”記録することが重要です。

記録のチェックポイント(5W1H)
  • 【いつ】…発言があった日時、訪問時間
  • 【どこで】…居室・玄関・デイの送迎中など
  • 【誰が】…発言者とその関係(本人・家族・第三者)
  • 【何を】…暴言や脅しの内容(可能な限り原文)
  • 【なぜ】…トラブルのきっかけや原因
  • 【どうした】…その場での対応、報告先、本人の状態
例:4月15日(火)14:05頃、自宅訪問時にD氏より「使えない、来るな」との暴言あり。原因は前回の床掃除の不満。本人に冷静に対応し、事業所に報告。

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5.エスカレーションのタイミングと方法
「報告が遅れてしまった」「もう少し我慢しようと思った」——
そうした判断が、被害の長期化につながります。

相談・報告は「違和感レベル」でOK
「これはおかしいな」と思った時点で、以下のような担当者に報告しましょう。
  • サービス提供責任者
  • 管理者
  • 施設長・事業所長
  • ハラスメント窓口(法人による)
ポイントは“報告をためらわないことです。

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6.報告しても「自分の評価が下がる」ことはない?
多くの職員が恐れているのが、「カスハラを報告したら、クレーム処理能力がないと見なされるのでは?」という不安です。

しかし、職場が真に職員を守る文化を持つならば、報告は“評価”の対象でこそあれ、マイナスにはなりません。

職員の声を拾い上げる体制づくりは、管理者の役割です。その第一歩が「正確な初動記録」と「勇気ある相談」です。

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7.カスハラ初動対応マニュアル(図解)
ステップ 行動内容 注意点
① 受け止める 冷静に話を聞く 否定や感情的な返答は避ける
② 判断を保留 要望や苦情を持ち帰る その場で約束しない
③ 記録する 5W1Hで記録 曖昧な表現は避ける
④ 報告する 上司・管理者に共有 早めがベスト
⑤ チームで対応 他職員と情報共有 継続的な支援体制を作る

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8.まとめ|「我慢」より「行動」が職員と現場を守る
介護現場におけるカスハラは、ひとりで立ち向かうには大きな負担です。

しかし、初動対応を「正しく・迅速に」行うことで、事態の悪化を防ぎ、職員自身の心を守ることができます。
  • 感情的に対応しない、判断は保留
  • 記録は事実ベースで具体的に残す
  • “違和感”の段階で、ためらわず報告を

●研修講師・コンサルティングのお問い合わせは、ホームページからご連絡をお願い致します。

https://bellagaia17.com

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