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2025年05月24日
介護現場で急増するカスタマーハラスメント――あなたの職場は大丈夫ですか?
こんにちは、ベラガイア17 人材開発総合研究所の梅沢佳裕です。
介護現場で働く看護・介護職員やケアマネジャーに対する「カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)」が深刻な社会問題となっています。暴言、理不尽な要求、人格否定――これらの行為は、現場の人間関係や職員の心をむしばみ、離職やサービス低下にも直結します。
2025(令和7)年4月に東京都が「東京都介護職員カスタマー・ハラスメント総合相談窓口」を設置し、行政レベルでの対応が始まりました(出典:東京都福祉保健局)。
https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/04/2025041811
また、2024年5月15日付「シルバー産業新聞」では、「ケアマネジャーの33.7%が過去1年間に利用者や家族からのカスハラ被害を経験している」という衝撃的な実態が報じられました。
https://www.care-news.jp/news/XMAG7
このブログでは、カスハラの実態とともに、「なぜ自分にも起こりうるのか」「事業所としてどう向き合うべきか」を解説します。
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1.カスハラは誰にでも起こりうる「職場のリスク」
カスハラの問題は、一部の特定職員だけが直面しているわけではありません。職種、経験年数、性別に関係なく、誰にでも起こりうるリスクです。
たとえば、訪問介護を始めたばかりの新人職員が、利用者の家族から「仕事が遅い」「前の人のほうがマシだった」と言われたケース。
あるいは、10年以上のベテランケアマネが、サービス内容に納得しない家族から「おまえのせいで母が悪くなった」と毎日のように責められた例もあります。
共通しているのは、相手のストレスや不安、制度への誤解などが背景にあるという点。そしてもう一つ、現場職員の多くが「介護だから仕方がない」「お客様だから我慢しよう」と感じてしまい、被害を被害と認識できないまま、心をすり減らしてしまうことです。
このような状況は、決して一過性のトラブルではなく、介護業界全体の構造的な問題といえます。だからこそ、「自分とは関係ない」と思わずに、誰もが当事者になり得るという視点で備えることが必要です。
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2.介護現場で多発しているカスハラの具体例
介護職員やケアマネジャーが直面するカスハラには、さまざまな形があります。
- 利用者・家族からの暴言や威圧的な言動(例:「バカにされてる気がする」「あんたじゃ話にならん」)
- 業務外の連絡(深夜や休日に私用の電話、LINEなど)
- サービス内容や契約内容に対する過度な要求(例:「無料で掃除して」「もっと頻繁に来て」)
- 感情的な非難や無視(例:「こいつの顔も見たくない」などの陰口・排除)
- SNSや口コミサイトを通じた名誉棄損や誹謗中傷
これらは一度でも受けると心理的ダメージが大きく、業務継続に影響することが少なくありません。
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3.事業所がとるべき5つの対応策
介護事業所がカスハラに備えるためには、以下のような対応が有効です。
① カスハラの定義と対応ルールを明文化する
就業規則や職員マニュアルに「許容できない言動」「対応の基本方針」を明記し、現場での判断を助ける体制を整えます。
② 被害を報告しやすい仕組みづくり
被害にあった際に、上司や第三者に相談・記録できるフォーマットや仕組みを用意します。記録を残すことが再発防止や証拠保全にもつながります。
③ 職員研修の実施
ロールプレイや動画教材を用いたカスハラ対応研修を定期的に行い、新人職員でも落ち着いて対応できるスキルを身につけさせます。
④ 利用者・家族への啓発
施設内掲示やパンフレットなどで「お互いに尊重し合う関係性の重要性」について伝えます。事前に「ハラスメントは対応できません」と明示することも効果的です。
⑤ 外部相談窓口の周知
東京都の「介護カスハラ相談窓口」など、公的な支援制度や専門窓口の情報を職員に共有し、孤立しない安心感を持たせることも重要です。
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4.まとめ:介護職を守るのは組織全体の責任
介護職員やケアマネジャーが笑顔で働ける環境は、利用者にとっても最善のケアを受けられる前提条件です。
カスハラ対策は、単なる苦情処理ではなく、職場の安全管理・人材定着・サービス品質の維持にも直結する重要な取り組みです。
「私には関係ない」と思わずに、今こそ職場全体で向き合い、守り合う意識を高めていきましょう。
出典・参考文献
- 東京都福祉保健局(2024年10月)「介護現場のカスハラ相談窓口」
- シルバー産業新聞(2024年5月15日)
ケアマネ「やりがい」調査 6割以上が「ケアマネ続けたい」
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